「寝落ちしても、大丈夫だと思える街。」——大船渡で働く28歳ママが語る、“支えられて生きる”子育ての日常

「やるべきことを残したまま子どもと寝落ちして、朝に後悔することも多々あります(笑)」

そう笑顔で語るのは、大船渡市観光物産協会(以下、観光物産協会)で働く佐藤さんです。仕事に家事に育児、目が回るような忙しさの中で彼女を支えているのは、共に子育てをしている旦那さんの存在と、子どもに温かい眼差しを向けてくれる地域の人々でした。

買い物や医療の選択肢が少ないという地方ならではの悩みも抱えつつ、それでもこの街で子育てをする安心感とは?自身の経験に基づいた、大船渡で働くママの「リアルな日常」に迫ります。

佐藤李沙
大船渡市赤崎町出身の28歳。震災後のボランティアとの交流をきっかけに地域貢献を志す。現在は観光物産協会にて、イベント運営やPR業務を通して街の賑わいづくりに尽力中。地域の人の温かさと家族の協力に支えられながら、仕事に育児にと奮闘する等身大のママさん職員。

「海と山のそばで暮らしたい」—都会ではなく大船渡を選んだ理由

赤崎復興市の様子

ーー都会に出ず、地元・大船渡で暮らすことを選んだ理由は何ですか?

私が大船渡で暮らすことを選んだ理由は、自然が好きだからです。私の周りは都会に出た同世代が大半ですが、私は山や海が近くにある自然豊かな環境が合っていると感じます。

私にとって、都会は遊ぶ場所です。たくさんの建物や人は、住むには息苦しいと感じるのです。

ーー現在勤務されている観光物産協会に入ったきっかけを教えてください。

「前職を長く続けられないな」と考えていた社会人1年目に、夫が一緒に仕事を探してくれて、「この仕事向いてるんじゃない?」と勧めてくれたのがきっかけです。

また中学2年生の頃、東日本大震災で被災した経験も関係しています。当時から、神戸大学の先生たち学生たちが私の出身地である大船渡市赤崎町に支援に来てくれました。

今でも彼らと赤崎復興市に関わっていて、地域に貢献したい気持ちがあります。その中でも、観光で地域を盛り上げられればと思っています。

ーー素敵ですね。観光物産協会ではどのような仕事をされていますか?

施設の貸館業務、観光案内、動画の撮影・編集、施設でのイベント企画・運営など、多岐に渡ります。

観光物産協会全体では、観光案内やご希望のパンフレットを送付することはもちろん、市内の特産品を東京や鎌倉などのイベントに持って行って物販をしたり、修学旅行などの教育旅行の受け入れでコースを提案したり、海外からのツアーの受け入れも行ったりします。他には、大船渡さんま焼き師の育成・派遣も行っていますよ。

子育てを“気にかけてくれる街”。大船渡のあたたかい支援

夢海公園にて撮影

ーー実際に子育てをしていて、大船渡市の子育て支援についてどう感じますか?

妊娠中から、市の助産師さんや保健師さんから「最近どうですか?」と電話をいただいたり、子どもの心配事があった時も電話や大船渡市こども家庭センター「DACCO(だっこ)」で話を聞いてもらったりしています。皆さん親切で、気軽に相談できる雰囲気です。

地方のいいところは、一人ひとりに気をかけてくれるところだと思います。

ーーそれは心強いですね! 地域の人とのつながりに助けられた経験はありますか?

本当に地域のみなさんは親切で、気にかけてもらい助かっています。散歩に出ると、小さい子は珍しいので「何ヶ月?」「かわいいね」と声をかけてもらえます。

先日、日頃市(ひころいち)のイベントに行ったときは、餅まきがあって周りのおじいさんおばあさんたちが、拾ったお餅を子どもに渡してくれました。

また、市内にあるつどいの広場わいわいステーションが広くて、子どもを遊ばせるのに最適で、よく利用していました。スタッフの方と気軽に話ができて、息抜きするにはすごく良い場所ですね。

ーー逆に、都市部と比べて大変だと感じることはありますか?

子ども用品、特に子どもの洋服を買えるところが少ないことです。生まれてから1歳代のちょうどいいサイズの服が市内の店舗にはほとんどなくて困っています。

場所が近くても車で30〜40分かかる所に行きます。いろいろと比較検討したい場合は、ネットで買うか、北上や一関まで行かないといけません。子ども服は大きさや生地感も確かめたいので、なかなか難しいです。

あとは、病院も限られているので、全国的に広まってきている無痛分娩が選択肢にすらない、といった点はデメリットと感じます。今は少しずつ改善されているようですが、私が出産するときは、県内にはありませんでした。

ーーそれは大変でした。ところで、休日の過ごし方や遊び場の選択肢に満足していますか?

休みの日は家族みんなで子どもの用品を買いに行ったり、夢海(ゆめみ)公園に散歩に行って芝生で遊ばせたりします。あとは市内のイベントも意外と開催されているので、それに参加することもあります。

ーー子育てと仕事の両立はやっぱり大変でしょうか?

正直両立できているかわかりません。保育園を利用したり、夫の協力があったりして成り立っていると思います。やるべきことをやらないまま、子どもと一緒に寝落ちして、朝に後悔することが多々あります。それでも職場の時短勤務もあって、生活がギリギリ成り立っていると感じています。

ーー旦那さんはどのような育児を担当されていますか?

基本的にお風呂、保育園への送迎、そして一番助かっているのは子どもにご飯を食べさせてくれることです。私だとあまり食べてくれないのですが、夫はいつも盛り上げて食べさせてくれるので、子どもも気分良く食べてくれます。食器洗いなどの家事もやってくれて、協力的です。

ーーそれは助かりますね! 地域で働く母親同士のつながりはありますか?

職場には先輩ママさんがいるので、子育てについて相談に乗ってもらっています。あとは、支援センターなどでたまたま会った人と子育ての話をすることもあります。

市内の大きいイベントに行くと、結婚して市外から嫁いできた短大の同級生にばったり会うこともありますね。人とつながりやすい環境だとは思います。

子どもに“世界を見せたい”。これからの夢と願い

のびのび子育てサポーター スマイル主催「三陸鉄道に乗ろう!」のイベント参加の様子

ーーこれから公私問わず、やりたいことはありますか?

これからは、子どもにいろいろな経験をさせてあげたいです。動物園や水族館に連れて行ったり、旅行に行ったり、自然に触れる体験をさせてあげられたいと思っています。本人が「これをやりたい」ということがあれば、習い事に限らず、できるだけ応えてあげたいです。

自分のことで言えば、もう少し自由な時間ができれば、趣味のトランペットを吹きたいと思っています。仕事では、おおふなぽーとでの仕事が多いですが、物販で外のイベントにも行ってみたいです。仕事で外に出て、それぞれの地域でどのように観光が行われているのかを見て学びになるので。旅行に行っても、「こういう感じでやってるんだ」とすごく勉強になります。

ーーちなみに生活にやっぱり車は必要でしょうか?

公共交通機関を使ったり、家族に送ってもらったりして、車を持たずに生活している人もいます。もちろんあった方がお出かけするにも何するにも便利ですが、車がなくても生活できます。

ーー最後に読者に一言お願いします。

大船渡での子育てには、すごく満足しています。職場や地域の方々、そして夫。みんなに支えられているから、一人じゃないと思えるんですよね。誰かとつながりながら、自分らしく働いて暮らす。そんな「大船渡らしい生活」が、私にはすごく合っているんだと思います。

☆ ☆ ☆

今回のインタビューを通して、大船渡でのリアルな子育てに触れることができました。市内には大きな公園や子どもが遊べる施設もあり、休日に外に出るのにはぴったりですね。

また市から子育てについて電話がかかってくるなど、一人ひとりに気をかけている印象がありました。

大船渡の子育て世代は決して多くはありませんが、そうやって支援してくれる体制はとてもありがたいものですね。

これからも大船渡についてさまざまな視点で取材を続け、気づきや発見を得ていきたいと思います。

〈取材・文=ひろゆき(@himon_da)/編集=八巻美穂(@bh1ly

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